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なぜ、医師はあなたの薬を減らさないのか? その2 勤務医の苦悩


その1のまとめ

薬を出して儲かるのは手数料収入で数や値段は関係ない。

薬を出して儲けていると思われるのは、医師にとって非常に心外。

でした。

 お医者さんは神様ではありません。神様ならお賽銭を投げて手を合わせれば言葉に出さなくても願いを叶えてもらえるかも知れません。

でも、神様にしっかりお願いする場合は?

地鎮祭でもそうですが、別にお供えを用意して『家内安全』や『商売繁盛』など、はっきりとお願いしたいことを伝えてから特別にお願いしますよね。

 お医者さんは神様ではありません。皆さんが外来で受診するときに黙っているだけでは願いが通じるはずもありません。お供えは窓口や保険で払っているので、声に出して『薬を減らして下さい』と言いましょう。

担当医にお願いしたことがない人はまずここから始めて下さい。

 で、担当医にお願いしても減らしてもらえない場合、2つの場合が考えられます。

1.薬を減らす事で、患者さんの状態が明らかに悪くなる

2.薬を減らそうとする事で、医師自身の状況が明らかに悪くなる

1.の場合は患者さん側に得することはありません。あきらめましょう。

2.に関しては少し説明が要ります。『薬を減らす事』ではなく、『薬を減らそうとする事』に着目して下さい。

 薬を減らすためには、医師が現在の状態をより詳しく知る必要があります。状況を確認したあと、どういう対策が取れるのか、処方の組み立てを考えるために時間を取られます。

次回の外来では薬を減らしたことで影響がないかどうか確認する必要があり、少なくとも今回と次回の診察で通常以上に時間がかかることが予想されます。

薬を飲む事で生じる身体の不調が、薬をやめたことで改善することがあり、そういう場合には次回以降に外来の時間が短くて済む場合はありますが、そういう例は多くありません。

 時間を取れば診察時間がずれ込んで医師自身の休憩時間がなくなったり、帰る時間が遅くなったりして、労働時間は長くなります。

勤務医は概ね年俸制で動いているので、残業代は出ません。長く働いても給料には反映されません。言い換えると、勤務医には診察に時間をかける事による金銭的なメリットはありません。

 それでも患者さんのため、薬を減らすべく診察に時間をかけたとします。

売上は患者単価(客単価)×患者数(客数)なので、客単価を上げると患者数が減っても売上は立つのですが、薬を減らす努力をしても診療報酬ではほとんど評価されません。時間をかけても患者単価(客単価)が上がらないのです。

時間をかけて患者をみると、時間あたりに診察できる患者数は当然減ります。さらに悪い事に、勤務医とて売上で評価される点はサラリーマンと同じですので、時間をかけると『売上の上がらない医師』として悪い評価が付く可能性もあります。何も知らない初診の患者さんから『いつまで待たせんねん!』とクレームが来て、患者さをで怒らすことになりかねません。

 実際、こういう医師は「話をよく効いてくれる先生として」担当患者さんからの評価は高いことが多いのですが、いかんせん診ることのできる患者の数も少ないわけですから、恩恵を受ける患者さんは少なくなります。

 そして目の前の患者に手中しすぎると周りのスタッフに目が行かなくなります。

午前の外来の時間はとっくに終わり、1時を過ぎてもまだカルテは山積みで、看護師も事務員も昼休みに入れません。

患者単価(客単価)も増えず、患者数(客数)も減った状態では診療報酬(売上)は上がりません。

 そんなとき、看護師長が院長に言います。『あの先生、時間が掛かってナースはまともに休憩を取れません。』

それを聞いて院長が『どんくさいヤツやな、売り上げも上がってないし・・』と考えても不思議ありません。

 これが飲食店ならサービスが充実したお店になるので料理の値段を上げたりサービス料を取ったりして収益を増やすことができます。

しかし、日本では保健診療が原則で全国一律の料金です。大学病院で教授が1時間かけて診てくれても、研修医上がりの先生が5分で診察を済ませても料金は同じです。

医療の大部分が保険診療である以上、患者に時間をかける先生が経済的に報われる道は非常に細いものになっています。

 解決策としては特定の先生に診て貰う際に保険とは別枠で指名料を別途払ってもらう、なども考えられます。病院は指名料で収益を確保でき、患者さんは医師にゆっくり話を聞いてもらえ、医師は病院や患者さんから充分評価される・・

良いことずくめのように見えますが、そういう医師には独立開業すると金も評価も両方手に入るのでは、という誘惑がつきまといます。

 どっちにしろ、混み合う病院で「あなただけにはゆっくり話を聞いてくれる」先生を見つけることは至難の業です。

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