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危ない薬と危険な手術 3


 前回はほとんどの手術は外科医二人で出来る、というところまで書きました。今回は病院の規模と設備について。

 外科医の能力を生かすにはそれなりの設備が必要です。

それなりの設備をそろえるにはそれなりの投資が必要で、利益も生み出さねばなりませんので、それなりの数をこなす必要があります。

 先進の手術機器が画期的で需要が多ければ、数年でパソコン同様、使い勝手の改良とコストダウンは進んできます。

一度便利さ(治療成績の良さ、合併症の少なさ、傷のキレイさ、手術時間の短さ)を手にしてしまうと、元に戻れないのは家電製品も医療器械も同じです。

 若い世代は特に意識せず新しい技術も古い技術同様に初めから自然に学びます。古くはクルマのマニュアルとオートマ、最近ではガラケーとスマホ、などいくらでも例を挙げられます。ガラケーになれきっているひとは、よっぽど困らないとスマホには手を出しません。

 外科医の場合、古い技術に過剰適応し、その手術ばっかりしている外科医は、その仕事がある間は新しい技術を身につける必要がありません。

概して、古い技術を高度に身につけた職人は、その技術が高度であればあるほど、新しい技術に対して批判的です。

それは、アメリカの会社はCDプレイヤーとは全く関係なかったので、iPodという名前でハードディスク音楽プレイヤーを売り出して大成功を収めたのに対し、日本の会社ではハードディスクで聞くウオークマンの開発しようと若手が提案したところ、CDプレイヤーが売れなくなるという理由*で却下されたことと似ています。

*実際は著作権などの問題もあり、製品化をためらったことも関係していたそうです。

古い道具を使った特殊な技術は、医療で無ければ『伝統的な』という言い方もでき、場合によっては高い料金を手にする事も出来ます。

手術の診療報酬は新しい器械でした方が多少高いのですが、患者さんは元々の値段を知りません。患者の立場に立てば(治療成績の良い、合併症の少ない、傷のキレイな、手術時間の短い)新しい器械を使いこなしてくれるに越したことはありません。

 大病院(教育病院)は早い段階で高度で最先端の器械を取り入れます。新しい器械は概ね高価で、小さな病院では導入しても採算が取れません。

高度先進医療は実は費用と採算がようやく折り合い始めた医療でもあるのです。

つまり、コストとは無縁ではありません。

 そのため、費用を回収出来るまでは『最先端の機器(方法)を使った手術(治療)』をすすめる、ということが起きてしまいます。

 さらに大きな病院では研修医の受け入れをはじめ、教育機関としての側面もあるので、『最先端の機器(方法)を使った手術(治療)』を何例もして、研究成果を報告せねばならない、というプレッシャーがかかります。

 最先端を求める人には問題が無いようにもみえますが、新しい技術が本当にいい技術かはある程度多くの人に試さないと判りません。

器械も使い方を間違えると思いもかけない結果を生じます。

開発者が思いもかけない使い方をする場合もあるので、誤作動防止や手順の省略など、改良も必要です。

逆に言うと器械の使い方もこなれていないと誤作動、想定外使用もあるので注意が必要です。

 それに対し、市中病院はそんなしがらみとは関係ありません。使い勝手が良くなって習熟に時間がかからなくなった段階で、価格が下がってからタイミング良く新しい技術を取り入れる事ができます。

その時点では問題が起こりそうな箇所も大病院から発表された論文でおおよそ判るので、さらにリスクは下がります。

 私がDVDプレイヤーを買うタイミングは、DVDプレイヤーの値段が下がって、レンタルビデオ屋のDVDコーナーが充実してからでした。それまではビデオデッキで十分です。

*H13年に結婚し、結婚式を挙げました。式場の手配でその様子をビデオテープに録画しましたが、DVDに録画するオプションは確かプラス10万円でした。

テープの場合、長期保存すると画質の劣化が起こります。今なら経済的に余裕もできたので10万円足しても良かったかなとも思います。

 今までの話は、選択の余地がある場合です。大病院でしか出来ない手術(超専門的、希少例)の場合は素直にそこで受けると思います。

 難易度が高い手術(例:膵頭十二指腸切除術など、予定時間8時間以上の手術)に関してはそういう病気になった自分の運命を受け入れるしかないですね。

私ならたぶん手術はしません。

なってみないと判りませんが。

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 ということで、私(家族)が手術を受けるなら

・外科医の年齢が35歳(専門外科医取得、外科医としての経歴が7年)以上

  -ある程度の経験-

・外科医は最低二人いること。

  -ほとんどの手術は二人で問題なし。-

・病院の規模は100前後-200床ぐらいまで。大きすぎる病院(教育病院)は避ける。

  -こなれている技術の方が問題が少ない。-

で、一番大事なのが

・考えに共感できるものがあり、この人なら任せられそう(要は相性が良さそう)と思えるような主治医

  -任せられるかどうかは結局主治医のひととなり-

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